天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
ほとんどの団員が、店の奥に作られた小さな舞台の上で、練習を始めた。

そんな中、明菜だけが、まだ…アルテミアを見つめていた。


「何か…顔についてますか?」

「え…」

いつのまにか、平常心を取り戻したアルテミアが、明菜の顔を見た。

戸惑う明菜を、数秒見つめた後…

アルテミアはにこっと笑いかけた。

「ピアスが気になります?…あっ!片方しか、付けてないからですか?」

ピアスは、左耳に付けられていた。三角のオーソドックスなピアス。

それに、手をかけたアルテミアの左手に、指輪を見つけた時、

「あ…」

明菜は思わず、声をもらした。

アルテミアは、微笑むと、

「機械の操作を、教えて頂けるんですか?よろしくお願いします」

ぺこっと頭を下げると、アルテミアは、照明等のスイッチが並ぶ…厨房をつくり変えた空間に向かう。



「アルテミア…」

明菜に聞こえないように、囁くように言うと、

「わかっている…。あの時の女だろ」

アルテミアは一度、僕が明菜に指輪を取られた為……指輪の中に閉じ込められたまま、敵に捕まったことがあったのだ。

その時は、異世界に飛ばされたショックで、明菜はずっと眠りについていた。


「あの女は………怪しい…」

アルテミアは呟くように、言うと、くるっと振り返り、
満面の笑みを浮かべると、

「先輩の名前…もう一度、教えて下さい」


「あ!ああ…」

少し拍子抜けしたような表情を浮かべたが、すぐに明菜はこたえた。

「沢村明菜です」

「星野ティアナです」

アルテミアは、明菜に近づき、右手を差し出した。

「ああ…よろしくお願いします」

明菜は、アルテミアの左手を気にしながらも、アルテミアの握手に応じた。

(間違いない…)

目の前にいるのは、紛れもなく………僕の幼なじみの明菜だった。

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