天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「あれは!」

僕は、知っていた。カードを額に当てる行為を。

しかし、カードはもう使えないはずだ。

それに、ここは……ブルーワールドではない。

「あり得ない…」

しかし、唇を噛み締めた僕の目の前で、彩香は変わっていく。

人間ではないものに。

異様な白い目玉のような無数の模様が、描かれた二枚の羽を広げて、彩香は空中に浮かび上がる。

その姿は…まるで…。

舞い上がる彩香の羽から、白い粉のようなものが、降り注ぐ。

僕は口を塞いだ。少し気管に入った。

毒だ。

僕は何ともないが…。

「赤星!」

ピアスの中から、声がした。

僕は頷くと、左手を突き出し、叫んだ。

「モード・チェンジ!」

指輪から光が溢れ、光を切り裂いて、アルテミアが現れた。

アルテミアの周りに、竜巻が沸き起こり、

彩香から落ちていく粉を、吹き上げた。

「このままでは、町に毒が!」

僕の叫びに、アルテミアは叫んだ。

「モード・チェンジ!」

二枚の白き翼が生え、アルテミアは上昇気流を起こしながら、空中に飛び上がる。

それは、風が空気の筒のようになり、彩香を閉じ込めた。

空気の壁に阻まれ、横に飛べなくなった彩香は、仕方なく上に上がっていく。

毒を降らしながら。


「てめえ!」

筒の中は、真っ白になる。

その中を、アルテミアが飛んでくる。

一瞬にして、彩香を追い越し、上空で静止したアルテミアの姿を見上げ、

「まるで、天使気取りね。そうやって、兄を誑かしたのね」


「だ、誰がだ!あいつは、勝手に自滅しただけだ!多くの命を犠牲にしてな」

アルテミアの両手に、二本の回転する物体が飛んできて、

クロスさせると、剣に変わった。

< 79 / 227 >

この作品をシェア

pagetop