天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
剣を振るい、彩香に向けて、振り下ろそうとするアルテミアに向かって、僕は叫んだ。


「アルテミア!殺すな!」

「チッ」

落下するアルテミアと、彩香がすれ違い、


アルテミアは地上に、着地した。

すると、風の筒は消え、上昇気流と化して、空高く舞い上がっていった。

白い毒も消えていた。

そして、片方の羽根を切り取られた彩香が、飛ぶ力とバランスを失い、落ちて来る。


「彩香さん」

降り立ったアルテミアは、振り向くと、赤星浩一に戻っていた。

赤星は、両膝を地面につけ、切られた羽根を確認している彩香に、近づいていく。

「あなたが…この力を使わないなら…あなたは、人の社会に戻れます」

赤星の瞳が、赤く光る。

「今から、記憶を消します」

近づく赤星から、逃れる為、彩香は残った片羽を動かし、何とか飛ぼうとする。

しかし、飛ぶことはできない。

「いやよ!いや!!」

彩香は、激しく首を横に振った。

「あたしは…もう演技なんて、したくないの!人間なんて!演技しなくちゃ生きれない動物なんて!あたしは、蝶になるのよ!」

絶叫する彩香の全身を、突然上空から、雷が撃った。

「なっ!」

突然の激しい光に、目を細めた僕の前に、二メートルは越す巨大な体躯が現れた。

視界を遮られた僕の頭上から、声がした。

「すまんな…少年」

僕はその声に、聞き覚えがあった。

僕の胸板に、同じぐらいの大きさの巨大な手の平が、当てられた。

「赤星!」

アルテミアの絶叫をかき消し…雷撃が、至近距離から、発動された。

「ギラ……ブレイク」

僕の体は、地面を抉りながら、数百メートル吹っ飛んでいく。

雷鳴の塊が、僕の胸でスパークしている。

「も、モード・チェンジ!」

雷鳴が爆発する前に、僕は叫んだ。



< 80 / 227 >

この作品をシェア

pagetop