天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「あんたは……春奈ではないわね……」

美奈子は、ドアにもたれる春奈を凝視した。

春奈は、肩をすくめ、

「正確に言うと…春奈という人間は、最初からいないわ」

「じゃ…お前は誰なんだ?」

美奈子は怯むとこなく、春奈に詰め寄った。

春奈は苦笑し、

「強気な女は、好きよ」

「こたえて!」

明菜も、春奈に詰め寄る。

「フフフ…」

春奈は、声を出して笑うと、二人を交互に見て、

「あたしの名は、リンネ。あんたが、行ったことのある世界の者よ」


リンネは、明菜を見、微笑んだ。

「リンネ…」

明菜は、その名を思い出そうとしたけど、

まったく浮かばない。

「あなたとは、一度やり合ったことがあったのに」

リンネは、ドアから離れ、明菜に近づいた。

そして、耳元で囁いた。

「まあ…その時は、あなたは…剣になっていたけどね」

「剣…」

その記憶もない。

結局、明菜は囚われていたことが多くて、異世界で自由になったことがない。

「そう…」

リンネは、手を伸ばし…明菜の頬に触れた。

それは、ひんやりとして、冷たかった。

「剣…。あなたは、自分で戦う力はないけど…。時空間を切り裂ける剣に、なれるわ」

明菜は、大きく目を見開いた。

リンネはクスッと笑うと、

「その力を使うと、この世界から、我々の世界に行くことが、できる。だから…」

「だから?」

真っすぐにリンネを見据える明菜に、リンネは頬に当てた手を離した。

「あいつらが、我々の世界に攻め入るつもりなら…あんたを手に入れようとする……と思ったんだけど…」

リンネは、二人から離れた。

「違うみたい。あいつらは、この世界しか興味がないみたい」

リンネの体が、変わる。

炎に包まれた灼熱の体。

少しでも、近づいたら…消滅しそうだ。
< 84 / 227 >

この作品をシェア

pagetop