天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「まあ…田崎や他のメンバーは、そのまま参加するし…あたしが抜けても、問題はない」

美奈子はあっけらかんと言ったが、内心は強がっているだけだった。

もともと大手の劇団が、候補に上がっていたのを、

後輩の里緒菜が無理言って、こちらに回してくれた仕事だった。

「あと1ヶ月…余裕があったら……明菜……お前が主役でいけたんだけどな…」

まだ参加したばかりの明菜が、公演までに主役をはるには、時間がなさすぎた。



「だから……暇になったから…。赤星君を探そう」

美奈子の言葉に、すぐに明菜は頷くことはできなかった。

数秒遅れて、


「はい…」

明菜は返事した。

その元気のない声に、美奈子は少し声のトーンを上げ、

「べ、別に、まったく手がかりが、ないわけでないぞ」

「え?」

「調べてみたんだ…ネットで…何かおかしなことはないかと……。そして、思い出したんだ。彩香の言葉をな」

「彩香…。そういえば、彼女も行方不明に…」

「警察が来たよ。あたしのところにな。家族から、捜索願いがでたようだ…。店を出てからの足取りが、つかめていないからな」


「どうしたんでしょうね…」

美奈子は、ため息をついた。出会ったばかりで、あまり親しくはなかったが…やはり同じ劇団員だ。心配ではあった。


「あたしは……あの子も、一連の事件に巻き込まれていると…思う。なぜなら、あの子のお兄さんも…行方不明になっているからだ…。それも、数年前…」

「数年前?」

「ああ…」

次の美奈子の言葉は、明菜に衝撃を与えた。

「数年前に行方不明になったお兄さんは…あたし達と同じ学校だ」

「!」

その言葉に、明菜は凍りつく。

「そうさ…お前の数日後、いなくなった五人のうちの1人だ…」


いなくなった五人は、異世界に飛ばされたのだ。

彼らがどうなったのかは、明菜は知らない。

ただ未だに、戻ってきてはいないとしか。


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