天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「だから…警察は、今回の件も、お兄さんと同じような…」

「ちょ…ちょっと待って下さい!警察が、そこまで詳しく話したのですか?それは、個人情報じゃ…」

美奈子の話を遮り、明菜は声を荒げた。

「別に…おかしくないだろ…。当時、行方不明になった7人…帰ってきたのは、明菜…お前だけだしな…」



明菜は、違和感を感じていた。彩香の兄が、あの時クラークにより、呼ばれた五人の中の一人であることがわかった。

(魔獣因子)

再び、その単語が頭に浮かんだ。

クラークは言っていた。

魔獣因子を持つ人間を、この世界に召喚すると。


「それと…ネットで調べた件だけど…」



トントン。

明菜の家のドアを、誰かがノックしていた。

ドクン。

その後に、明菜の心臓の音がした。

タイミングが合いすぎている。

「先輩…。ちょっと、誰かが来たみたいですので…」

明菜は携帯を置き、ドアへと近づいた。

安いワンルームマンションでも、インターホンくらいはついている。

「はい…」

外から、声が聞こえた。

「警察の者ですが…」


明菜は、インターホンの画面に映る男を見た。

ドアの前にいる男は、確かに制服を着ていた。


警察に、間違いはないようだ。

「先日行方不明になった…同じ劇団に所属なさっていた松野彩香について…少しお話を伺いたいのですが…」

まだ劇団に入って数日の明菜…の家に、事情聴取に来るなんて…よっぽどのことだ。明らかに、疑われているのか。


明菜は、チェーンをかけたまま、ドアを開いた。

ドアの前に、二十代後半と思われる警官が、立っていた。

警官は、帽子を取り、頭を下げると、にこっと微笑んだ。

違和感はない。

だけど……。


(私服ではなく…制服?警察だとはわかるけど…)

事情聴取に、制服がくるのか。

明菜の訝しげな表情に、気付いた男は、胸ポケットから警察手帳ではなく、一枚のカードを取り出した。

「あなたは…ご存知のはずだ」

カードを提示する警官の顔から、笑みが消えていた。




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