天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
ドアの隙間から、ぬうっと差し込まれた腕。

カードを挟む指。


「!」

明菜は、絶句した。

袖口から見える警官の腕は、人間のものではなかった。

後退ろうとする明菜。



「何かあったの?」

近所に住む中年の女が、不信そうに、警官の肩越しに、覗くのが見えた。

「おばさん!危な」

明菜が、女に向かって叫ぼうとした瞬間、

警官は舌打ちした。

後ろを振り返らずに、腰につけてあった拳銃を抜くと、

振り返りざま、発泡した。

「きゃっ!」

いきなりの惨劇に、明菜は顔を覆った。

至近距離から打たれ、女は吹っ飛び、

廊下の壁にぶつかった。

「おばさん!」

パニックになる明菜に、警官は怒鳴った。

「心配するな!こいつらが、鉛玉くらいで、やれない」

警官は、明菜と壁に激突した女の間に立つ。

「こいつらは…人の武器では倒せない」

「え…」

銃で撃たれたはずの女の体からは、血すらも出ていない。

壁から離れた女の体から、鉛の玉が、コンクリートの廊下床に落ち、転がった。

「チッ」

警官は、再び引き金を弾いた。

しかし、今度は、銃弾が弾かれ、明菜の部屋のドアの横の壁に被弾した。

「硬化したか…」

警官は、銃を捨てた。

「こうなれば…」 


女はにやりと笑った。

今まで、伏せみがちだった顔を上げた瞬間、

飛び出た目玉が、ナメクジのようにのた打ち回っていた。

「あんたの力を借りるぞ」

その場で見た化け物に、唖然とし、動けなくなっていた明菜のお腹の辺りに、

警官は、人の腕ではない右手をかざした。

すると、警官は明菜の体から、あるものを引き抜いた。

それは……。


「きえええ!」

奇声を発して、襲い掛かろうとする女を、

「フン!」

気合い一声で、一刀両断した。

それは、瞬きの時。

警官の手には、日本刀に似た剣が握られていた。

女の腰から、肩にかけて、スライドするように、2つに斬られ、廊下に転がる。

血というよりも、どんよりにしたゼリー状の赤い液体が、廊下の床に広がった。

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