天空のエトランゼ〜哀しみの饗宴(魔獣因子編)〜
「まだ…初期段階か…安定期を迎えていないやつが…あいつらの声を聞けるのか…」

警官は、床に倒れた女の死骸と、赤い体液を囲うように、空中で剣を円を描いた。

すると、廊下に円状の穴が開き、死骸はその中に、落ちていった。

「ヒュ〜!」

警官は口笛を吹くと、剣を掲げた。

「こ、これが…次元刀か…」

感嘆する男の剣を持つ腕。異様に黒く…それはまるで…腐っているような色。

それなのに、妙に腫れ上がり…血管が浮き上がっていた。

右手だけが、警官の体で異様だった。

「あなたは…」

その姿に、やっと動けるようになった明菜が、後退る。

ワンルームの奧まで、下がった時、

警官の手にあった次元刀が、消えた。

「やはり……使用距離があるのか」

男は、ドアに近づき、また腕を差し入れると……腕が伸び、あり得ない方向に曲がると、ドアチェーンを外した。

そして、ドアを開け、玄関に入ると、ドアを閉めた。

警官は、家には上がらず、部屋の奧で震える明菜を見た。おもむろに、話しだす。

「あんたは…監視されている。危険な…武器として…」


「あ、あなたは…」

明菜は震えながらも、部屋の角に立て掛けてあったホウキを取り、握り締めた。

勝てるはずがないが…逃げる場所もない。

震えながらも、戦う覚悟を決めた明菜に、警官はため息をついた。

「…俺は、あんたの敵ではない!味方…というより…」

警官は玄関で、正座した。

「あんたの力なしでは、何もできない…無力な、ただの人間だ」

正座し、姿勢を正す警官に、明菜は言った。

「人間!そ、その手は何よ!人間のはずがないわ!」

「この腕か…」

警官は突然、制服の上だけを脱ぎだした。

「この腕は…俺の腕じゃない」

シャツも脱ぎ、上半身裸になると、男の腕の付け根が露になった。

機械の接合部。

「こいつは…無理矢理、俺の腕に取り付けている……あんたの剣を使う為に」

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