GEDOU―樹守る貴公子―
鴉魔法師
「ソワカ・スイリュウテン・オン!」
天冥の腕の動きに合わせ、炎が轟々と音を立てて邪魅を飲み込む。しかし。
ざくっ。
ずぶっ。
邪魅の爪は次々をその外道の皮膚を裂き、傷を増やしてゆく。邪魅はその爪に付着した血をさも美味そうに舐めた。
「・・・ちっ」
炎が燃え広がらぬように広い範囲で結界を張っているのに加え、邪魅どもを相手にしなくてはならない。
いくら天冥といえど、気力が大幅に削がれている。
背中、左腕、胸元、こめかみ、太腿、綺麗に切れた傷からは血が流れ、川のようになっていた。
(どうするよ・・・これ)
天冥は、最初から一人で邪魅を全滅させるつもりは無かった。
邪魅に対抗するために『あるもの』を持ってきたのだが、どうにもこうにも使える時間が無さそうである。
天冥が立っている所に血が溜まり、それが月光を弾く。