GEDOU―樹守る貴公子―
『あるもの』を発動させるには、懐剣と水が必要だ。血で良いのかどうかは不明だが、無いよりはまし。
そのためには、その場から動くわけには行かない。
(こやつらさえ何とかなれば・・・)
あぁ、無闇に突っ込んでいくんじゃなかったなぁ。ま、いいか、俺のやり方だし。
理屈にならぬというか言い訳がましい言葉を心のうちに並べる。
すると、すぐ前にいた邪魅が吹き飛ばされた。
「!」
邪魅の後ろから、何者かが姿を現した。
身の丈七尺(約二メートル十センチ)ばかり、法師の衣を身にまとい、長い銀髪混じりの黒髪は細い男だ。その瞳は瞳の黒い部分が縦に細く、例えるなら、猛禽。
獲物を狙う鷹や鷲の目で、頬には刻まれたばかりと見える交差した傷がある。
邪魅は呻くように声をあげ、のけた。
「おのれ、いつぞやの化け鴉・・・」
「化け鴉・・・?」
一度眉根を寄せ疑問に思うが、すぐに意味が分かった。
夕時に助けた、あの鴉の化生だ。