GEDOU―樹守る貴公子―


「陰陽師どの!」


 鴉魔法師がギョッとして声を上げる。 


「・・・ふ」


 墓穴を掘ったと見た天冥の姿を見やり、幻周は嘲笑った。

 爛れた天冥の左手から、しゅうしゅう、と音を立てる。


「そこまで、何に必死になる?」


 幻周の声と共に、邪魅たちが次々と言い出す。


「代われるものなら代わってやりたい」

「俺が代わりに死んでやれればどんなにいいか」

「普通の人間として生きていれば、もしかしたら――」

「どうしてあの時、守ってやれなかったんだろう」


 くく、と不気味な笑い声と共に響く邪魅たちは、見事に「天冥の本音」をびしりびしりと言い当てる。


 天冥は何も言わなかった。


 間違いではなかったからだ。


「天冥よ」


 幻周はもう一度、畳み掛けるように言った。

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