GEDOU―樹守る貴公子―
一人、抱えられているほうの人間は明道だ。いや、抱えられていると言うよりも、襟を掴んで上に持ち上げられているのだが。
そして、明道を頑張って持ち上げているもう一人は長い黒髪の女だった。
あれは。
天冥には、その女に見覚えがあった。
「さ・・・や」
そう、もう一人の女は紛れもない・・・莢であった。
白い肌に桃色の頬が映えているのは、生前と全く同じだ。
「なぜ・・・」
天冥は零れ落ちるような声で言った。
「なぜ、お前がここに――」
「この方が、三途の川の手前まで来ていたから、止めたのです」
莢の声は葉が擦れるようで、微かな木漏れ日を感じさせた。