GEDOU―樹守る貴公子―
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屋敷の築地の内側に明道を横たわらせてやると、情けなさすぎるほど力なく倒れた。まるで青菜を茹でた後のようだ。
まったくこいつは、相も変わらず萎びた菜のようじゃ。
鼻であしらうように、天冥は「くく」と笑った。
まぁしかし、あのような状況の中で気絶したり失神しなかったのは大したものだ。
さすがは父親に命を狙われた身だ。肝が据わっているというか、そこらの憶病な貴族とは格段に違う。
『死ぬな、天冥っ』
天冥の耳には、明道が自分に放った言葉が未だに残っていた。
たれが死ぬか、と余裕綽々の顔で返してやりたくなる。
外道の、貴族の敵も同然の俺に『死ぬな』か―――。天冥の心の内に、馬鹿馬鹿しさは込み上げてこなかった。
そんな事、言うな。
「明道、ばか」
これで俺は、また人の心の温かみをかみ締めてしまったではないか。
天冥は、明道の頭にそっと拳を落とした。
なんだか、莢に似ているように見えた。