GEDOU―樹守る貴公子―
目を覚ましたときには、百鬼の姿と傷の痛みがそこにあった。
手当てが施してあるが、血の跡がある。
黒々としており、墨の雫を落としたようである。
「んーっ・・・」
傷があるにも関わらず、天冥は大きく背伸びした。
そして、しばらくぼーっとしてから腰を下ろす。
なんんだか、どこか物足りない。それは空腹にも似ている。
生きていくために欲する、何かだ。
何か忘れたような気がするが、なんだろう、と思う。
「・・・」
近くに置いてあった乾飯を入れる袋を見てみる。
中に入っていたのは、若菜と野いちごだった。
赤く熟れていて、甘そうな野いちごが二つ。
なんだか、とても気になった。