GEDOU―樹守る貴公子―
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「・・・ふぅ」
だいぶあの場所から離れたところまできた。
天冥は一本の木に背中を預け、ゆっくりと息をつく。
『まぁこの山なら、邪魅に渡すのも悪くなかろう』
先ほどの影の言葉を思い出した。
(邪魅・・・)
邪魅――山神の一種だとも言われており、山林の悪い気を起こし害を与えるといわれる、唐国の妖。魑魅魍魎の類にも近い。
(邪魅などつこうて、一体何をするつもりじゃ)
天冥は顎に手を当てる。
山林を邪気で穢す魑魅魍魎、邪魅。
山を手に入れたいならば、そんなものを使わなくともよいだろう。
もし彼らがこの山に住み付き、邪気を充満させるような事になれば、人も動物も寄り付かなくなり、ここは一層暗い山林となるだろう。
そんな事になれば―――『あの木』がある小原は木に覆われ、あの木も、邪気に満たされる事になる。
「・・・よし」
天冥は指を鳴らし、天冥は立ち上がる。
あの依頼主に聞いてやろう。
まず明道を捕まえて、あの依頼主の前に引きずり出してやろう。そして、今日のことについて聞いてやるのだ。
それでもし『天冥にとって都合の悪くない事』だったのであれば、明道を殺してやるまでだ。