GEDOU―樹守る貴公子―
逃亡
「わっ・・・!」
「まぁまぁ、待たれよ」
がっちりと逃げようとする明道の肩を掴む。
「出会った矢先から逃げるなど、無礼ではございませぬか。ねぇ、明道殿?」
「私は・・・っ、今ここで死ぬわけにはいかぬのだ。殺すなら・・・」
明道はそう言いかけ、口をつぐんだ。
もし、相手が自分のやろうとしていることを知っていたら。
もし、相手と繋がりを持つ父が今の事に関わっているとしたら。
「まさか・・・父上が、依頼を・・・」
「左様・・・」
絶望寸前の明道を見た天冥だが、それに関して笑う事はしなかった。
いつからか先ほどの笑みは消え、ひんやりとした色を目に浮かべている。
「そして私・・・俺は、明道殿を殺すように言われた」
「・・・っ!」
「酷い話ですなぁ。・・・よりに寄って、我が子を殺すとは―――」
「え・・・」
明道はふと瞠目した。
天冥の顔に、果てしないほどの落胆の色が浮かんだからである。
「そなたは・・・私を殺すのでは、ないのか?」
「うん?殺しますが?まぁ、何も無ければの話ですがね」
「何・・・とは」
「いや、色々と理由がありましてね。その依頼がもし俺に不都合な事があれば、明道殿を殺さず、依頼の黒幕を殺そうかと―――」