GEDOU―樹守る貴公子―
「・・・はい」
天冥は静かに答える。
「・・・金子を受け取れば、依頼は受けるのではなかったのか?」
若干怒りを含んだ瞳で、昌明は天冥を見る。しかし、天冥は流すようにこう言った。
「言っておりませんでしたか?私は昌明殿のくぐつではない、と」
昌明が弱みを突かれて黙り込む。
「私は誰の意のままにも操られはしない。ましてや、俺は金子が全てで生きているのではござりませぬぞ」
天冥は笑みを消し、真剣な表情を見せてはっきりと言った。
「金子をもろうても、命が危うかろうとも、誰の手にも渡らせたくないものがごさります・・・私には」
その気迫に押され、そして天冥の後ろに何か鬼気迫るものを感じた昌明は、しぶしぶと口を開いた。
「幻周の・・・頼みじゃ」
「幻周・・・昨晩、共にいた?」
昌明がうなづく。
「そやつの狙いが・・・」
言いかけて、昌明は口を開いたまま黙った。
「父上・・・」
奇妙に思って前に歩み出ようとする明道だが、天冥が突然右手を横に伸ばし、それを遮る。
「待たれよ」
そう言った天冥は、張り詰めた空気を発して身構えていた。