GEDOU―樹守る貴公子―
獅子はぐわりと牙をむいて飛び掛った。
「斬掻(ざんそう)!」
天冥は片手で作った刀印を横に振る。
刀印が描いた弧に沿うような形の呪力の刃が獅子に向かって飛ぶ。
二人に襲い掛からんばかりの形相で飛び掛ってきた獅子だが、なんとも呆気なく刃に裂かれてしまった。
「はやい・・・」
「まぁ、本物ではなく式じゃからな。さ、はよう」
「え、まっ・・・」
明道が何か言う前に、天冥はどこからか布を取り出し、それで明道の目を隠し、その手を引いて走り出した。
「な、なにをっ」
「悪いな。家までの道のりを見られては困るのでね」
天冥はそれだけ言うと、明道を連れて暗い暗い闇へと消えていった。
天冥の属する「陰」の世界へ―――。