GEDOU―樹守る貴公子―
では、なんなのだろう?
長い事このあたりに住みついていると思われたが、どうも京の人間ではないと見られる。
もしかすると、平民?まさか僧侶だったりして。
そんな事を考えていたが、足はそのまま明道の屋敷へと向かっていた。
「ちょっと待て」
天冥は総門をくぐろうとした明道を引き止めた。
「うかつに中には入るな」
「では、どうすればいい」
「まぁ、見ておけ。子供の様子だけを見に来たのだろう?」
天冥は明道の返事を待たずに、右手を築地に貼り付けて呪文を唱えた。
「見る者の瞳、心眼を持ちて目で貫くことを―――」
そう唱え、左手を築地に貼り付けて、右手を明道の目に当てた。
「なっ、なにをっ」
「目を閉じろ」
天冥に言われ、恐る恐る目を閉じる。
すると、浮かんだのはあまそぎの髪の娘と鞠を蹴る、水干の息子の姿であった。