GEDOU―樹守る貴公子―
人をからかう以上のことをやらかしている天冥が言えることか。
顔を伏せ、必死に顔を隠す天冥。その姿は、どう間違えてもどう酷く見ても「外道」と呼べるものではなかった。
いや、むしろ可愛げがある。
こんな初恋に狼狽する少年のごとき面は見たことがない。
(そういえば・・・『こいつ』って・・・)
天冥はこの木を、まるで人間の一人称を指すような呼び方で呼んでいた。
まさかこの桃の木、元は人間だったのだろうか?
男?女?
天冥の視線は、その木の根元に注がれていた。