GEDOU―樹守る貴公子―


 人をからかう以上のことをやらかしている天冥が言えることか。

 顔を伏せ、必死に顔を隠す天冥。その姿は、どう間違えてもどう酷く見ても「外道」と呼べるものではなかった。

 いや、むしろ可愛げがある。

 こんな初恋に狼狽する少年のごとき面は見たことがない。


(そういえば・・・『こいつ』って・・・)


 天冥はこの木を、まるで人間の一人称を指すような呼び方で呼んでいた。

 まさかこの桃の木、元は人間だったのだろうか?

 男?女?

 天冥の視線は、その木の根元に注がれていた。






< 50 / 157 >

この作品をシェア

pagetop