GEDOU―樹守る貴公子―
天冥のあの顔は、本来の姿なのだ。
心のどこかに例えようも無い悲しみ、自分が見たものは、それに対する慟哭の念を抱く本来の天冥ではないのだろうか。
天冥の瞳が四六時中潤んで見えるのも、先ほどのように、涙を流したように見えたのも、天冥が押し隠した他でもない『心の顔』。
彼の心が表の顔を凌駕して、知らず知らずのうちに人の目に見えてしまうのだろう。
その、未来永劫泣き叫んでいそうな、幼い子供の顔が。
(表情を凌駕する、心・・・)
天冥、お前は一体、どんな悲しみを背負っておるのだ?
お前の身に、一体何が起こった?そんな風になるまでの傷を、一体いくつ負った?
無論、心で問うても答えてもらえるはずはなかった。