GEDOU―樹守る貴公子―
「天冥・・・追いかけなくていいのか?」
「いい。面倒臭い挙句に、邪魅の数はあれだけではない」
「それは」
「あれはたったの一部じゃ。本当はもっとおるじゃろうな」
「・・・だろうと思った」
明道にも、あの邪魅たちの裏に潜む多数の邪気は感じ取っていた。少数の邪魅にまとわり付く多数の呪力の気配を。
「あ」
明道は邪魅たちに襲われていたあの化け鴉を見やった。
大振りな羽は当たりに散らばり、よく見れば左目が潰されてしまって痛々しい。
「――――!!」
化け鴉は天冥と明道の気配を感じ取り、けたたましく鳴いて威嚇した。特に鴉が警戒しているのが、天冥だ。
「天冥、あの鴉・・・」
「どうしたい?」
「助けねば」
明道が発した言葉に、天冥は「く」と笑った。
意外じゃな、貴族が妖を助けたがるとは。そんな感心の意が含まれた笑みである。