GEDOU―樹守る貴公子―


「やはりな。気が合うわけじゃ・・・多優と―――」

「道満殿ッ!」


 突然、天冥は瞠目して肩を震わせて、怒鳴り声に近いが小さめの威喝を放った。


「・・・なりませぬ」

「なぜじゃ。お前、心を許した相手には過去を明かすのではないのか?自分の本名も」

「道満殿の口からではなくっ!・・・俺の口から、言わせていただきたい」


 天冥は明道の手を不意に力強く握り締めた。握力の強さに顔を歪めそうになったにも関わらず、その手からは弱々しさが伝わってくるようにも、明道には感じられた。





 



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