GEDOU―樹守る貴公子―
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道満の元から去り、平安京を出たところに二人はいた。
あの後ずっと早歩きしていたので、明道の脚は珍しくぱんぱんに硬くなっていた。
「天冥、さっきの話」
「家に着いてからじゃ」
「・・・あの」
唇をずっと結んで開かなかった明道が、鮮明な声を出した。
「話して、くれよ?」
「何をだ」
「お前についてだ」
「お前、自分が俺に心を許されておるとでも思ってるのか?」
「どっちかは好きにすればいい。だが・・・秘密にするなら、顔に出さんでくれ」
「なんだと?」
「過去を思い出したような時のお前の顔は、悲しそうだ」
「黙れ」
短く言い切り、天冥は家(住み着いている破れ屋)の戸を開けた。ひどく短い灯台に火をつけ、部屋を薄暗く照らす。
その火に照らされて映った天冥の影は、ゆらゆらと揺れていた。