GEDOU―樹守る貴公子―


 この播磨近くの里は山を通じて他の国とも通じている。

 その里付近で謀反(むほん)を疑われていた国があり、その付近に属していたその里も、巻き添えをくって『弾圧』されたのだ。


 里の民は、もちろん多優も何も知らない。

 晴天の霹靂、まさに突然すぎる出来事であった。

 

 そこらに木霊す阿鼻叫喚。

 流れる人の血液による川。

 追撃する京の兵。

 夜を照らす、炎。

 
 そして多優の目に真っ先に映ったのは、自分を守って斬られた父の姿。


 頚動脈を斬られて飛び散った父の血液を、多優は頭から被ったのであった。


 血は多優の髪を伝い、顔や肩の麻の布を濡らした。


 この多優なる少年には、とても耐えられるものではなかった。





 多優の中で何かが音を立てて切れたのが、この瞬間である。





 結んだのは他でもない、印だ。




 ソワカ・スイリュウテン・オン――――!










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