GEDOU―樹守る貴公子―


 火柱が音を立てて、ことごとく民が殺された里から噴き出たのだ。


 一つではない。

 四方八方からいくつもの火柱が貫くように噴き出たのである。

 上がった火柱は軌道を不規則に変え、次々と兵を飲み込んでゆく。

 はじめのうち、兵たちは何が起こっているのかが理解できなかった。


 それが多優の仕業と理解したのは、多優の父を斬った男だった。多優が眼球が飛び出るほど見開いた目で、印を結び、呪文を唱えていたからである。


 いや、何らかの感情で逆立った髪は針のようになり、ぴりっぴりっ、と爆発するような呪力が多優の周りを取り巻いていたのが、一番の理由かもしれない。


 兵たちはその場で殺すのを躊躇った。


 まだ上手く方術を操れていないが、放っておけばいつ京に復讐をするか分からないからである。

 だから、彼らは多優を捕らえて京に連れて行ったのだ。











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