GEDOU―樹守る貴公子―
確かに、人を殺してしまった。
先ほども、あの時使った業火術を使い、人を殺め、あろう事か――微笑まで浮かべたのだ。
多優は思った。
こうなってしまう事が分かったから、彼らは自分を捕らえるために里ごと滅ぼしたのだろうか、と。
自分の中でいずれ、人を殺めても微笑を浮かべていられるような心が生まれると知っていたから。
そんな事さえ考えた。
もう、どちらが悪いのか分からない。
悲しみと、痛みと苦しみだけがそこに残っていた。
人なんて、嫌いだ。
多優ははっきりと、そう思った。