GEDOU―樹守る貴公子―



「そういうことさ」


 一通り話を聞くと、明道は視線だけを下に落とした。

 
 天冥、多優を外道の道に駆り立てたのは、外道としての彼の姿を作ってしまったのは、紛れもない武官やその判断を下した貴族だ。

 
 無実の罪で家族を、仲間を殺められ、それを救うのではなく、人を殺すことしかできなかった幼い多優。

 
 憂き目にもほどがある。


「奴らに向けられた視線もさ。わっぱの俺にだって分かった。この化け物め、残酷で血も涙も無い妖の子供じゃとな」


 明道は何も言わなかった。

 
 天冥が評判の悪い貴族や役人を狙う理由がわかった気がする。

 
 貴族や殿上人には、人を蹴落とすことで地位を得るものは多い。

 
 そんな人間の悲しみや血や骸の上に立ってまで、その重大さに気付かないからではないか?

 
 そんな事をしてもなお、足る事を知らぬものがいるから、天冥はそれらを嫌うのではないだろうか?

 
 足る事を知っていた、平凡に生きたいという人間の願いさえ聞き入れてくれないものを、憎んでいるからではないだろうか?






 
< 77 / 157 >

この作品をシェア

pagetop