GEDOU―樹守る貴公子―
「そういうことさ」
一通り話を聞くと、明道は視線だけを下に落とした。
天冥、多優を外道の道に駆り立てたのは、外道としての彼の姿を作ってしまったのは、紛れもない武官やその判断を下した貴族だ。
無実の罪で家族を、仲間を殺められ、それを救うのではなく、人を殺すことしかできなかった幼い多優。
憂き目にもほどがある。
「奴らに向けられた視線もさ。わっぱの俺にだって分かった。この化け物め、残酷で血も涙も無い妖の子供じゃとな」
明道は何も言わなかった。
天冥が評判の悪い貴族や役人を狙う理由がわかった気がする。
貴族や殿上人には、人を蹴落とすことで地位を得るものは多い。
そんな人間の悲しみや血や骸の上に立ってまで、その重大さに気付かないからではないか?
そんな事をしてもなお、足る事を知らぬものがいるから、天冥はそれらを嫌うのではないだろうか?
足る事を知っていた、平凡に生きたいという人間の願いさえ聞き入れてくれないものを、憎んでいるからではないだろうか?