GEDOU―樹守る貴公子―
天冥にその心を生み出させてしまったのは、彼らなのではないか、と。
「天冥は・・・なぜ、私を殺さない?」
「馬鹿か」
震える声で言う明道に、天冥は忌憚の無い言葉を投げかけてから言った。
「俺は人間が人であるために大切にすべき事が何か分かっていない奴が嫌いじゃ。だか、お前はそれが分かっておる。だから嫌いじゃない。それだけの話さ」
「大切なもの?」
「口では言い切れんがな。例を挙げるなら、子供とか、互いを大切にする・・・とか?」
そう言い、天冥は自虐的な笑みを浮かべた。
「まぁ、俺は違うがな。そういう奴らを容赦なく殺す俺も、そういうものは全く大切にしないということになる。必然的に、俺は人ではないということじゃ」
「そんな」
「だから俺は多優という名を捨てたのじゃ。人ではない・・・外道ならば、その名は必要ない」
天冥は、自分のことをよく理解していた。
矛盾した人間になりたくない。
嫌いな奴らのように、罪にも気付かぬ人間になりたくない。
そんな思いがあったからこそ、自分の罪を受け止めつつ、開き直っているのだ。