GEDOU―樹守る貴公子―
あれは天冥に対する畏縮と、若き外道に対する侮蔑を含んだ目だ。
『その若さで幾人もの人や妖を殺めると言われているとは、我らには考えられぬ。人ではないな』
何となく、そう言われているようにも思えた。
ここが無人なら今すぐ胸ぐらを掴みて持ち上げてやるところだが、さすがに天冥もそこまでしなかった。
私室まで行くと、天冥は勧められて円座に座る。
「あははっ」
「そっちにいったよー」
蹴鞠を蹴って外で遊んでいる子供達の姿が目に入る。
(・・・勿体無い)
天冥は思う。
まことに、勿体無き事であった。
人を呪えば穴二つ。呪った者ではなく、その者を呪おうという心を持った者が、それ相応の報い、いや、それ以上のを受けることになることだってあるのだ。
それは死後の報いの時もあれば、生きている間に起こる不幸ということもある。
可愛い子供を持ちながらそのようなことに手を染める、その必然的な不幸を背負う事が、勿体無かったのだ。
「・・・どの。天冥殿」
ぴくり、と天冥は目の前の男に目を向ける。
―なにを感慨深くなっておるのだ、俺は。
ふん、と鼻を鳴らすように息を吐き、黒ずんだ扇を開いて口に当てる。
「これは、失礼」