GEDOU―樹守る貴公子―


 明道に攻撃を当てるわけにはいかない。

 天冥はその横を囲んでいる邪魅を狙った。


「オン・シュチリ・キャラロハ・ウンケン・ソワカ!」


 水印剣印を結び、大威徳明王を唱える。


 轟々と後ろの天冥が持つ邪気が放たれる。純粋な殺気を持ち、無垢。それも、方術と言う刃を磨く研ぎ石となる。


『ゆけ』


 ごわっ、と重量感のある後をたてて邪魅共が舞い上がる。砂塵が吹き上がり、目をかすませる。

 同時に手足に絡まる捨て身の邪魅を解こうとするうちにも、明道の姿は完全に埋もれてしまっていた。


「明道ぃ!」


 天冥は力いっぱい叫んだ。

 しかし、もちろんのこと返事は返って来なかった。


 彼らが完全に見えなくなると、天冥は築地に拳を叩きつけた。

 奴らの狙いは、渾沌の型代。

 明道を生かしておいて、渾沌の在り処を吐かせるつもり、もしくは天冥に持ってこさせるつもりなのだろう。






 
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