GEDOU―樹守る貴公子―
幻周は確実に、あの山にいる。
天冥は、あの桃の木がある山を見据えた。
「・・・てやる」
ぶっ殺してやる。
明道をさらったからではない。
自分の持つ自信を覆されてしまった事が、天冥には何よりの屈辱であった。
「最強」を意味する九字を逆に利用され、若造だと嘲笑われ、吹き飛ばされた事に対しての敗北感。
この時の天冥は、まだ子供に過ぎない。
その幼さがもつ純粋さに殺意が混ざり、それに加え――『莢の木を守りたい』というゆるぎない想いが、幻周への殺意に拍車をかけたのだ。
しかし、と天冥の中である疑問が浮かんだ。
どうしてこうも殺したいと思っているにもかかわらず、それがそれほど呪力に反映されないのだろう?
殺意が足りない?それとも、もっと嫌な思いをしろ、と言うことなのだろうか?