GEDOU―樹守る貴公子―


 天冥は呪符を上に放り投げた。


「オン・キリク・・・・・・」


 呪符は見る見るうちに膨らんでゆく。


「カン!!」


 鞠ほどの大きさになった呪符が、破裂した。

 飛び散ったのは、天冥自身の血液。

 天冥は自らの血を頭から被った。雫の血が顔につき、天冥は顔中、そして体中斑模様になっていた。


(・・・・・あの時を思い出せ)



 父が目の前で斬られ、その血を頭から被った、あの日を。


 その血を拭うことなく、天冥は破れ屋に入って行った。


(守ってみせる――)


 自分の自信も。

 明道も。

 


 そして――莢も。


 天冥は懐剣を懐にしまった。









 
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