ファンタスティック·レボルバー
*
「二条幸香[にじょうさちか]は、今日も見学だな」
「はい。すみません」
「いや、体の問題だから仕方がない。次からは室内競技だから、今日はいつものところで我慢しろ」
名簿に何かを書き込みながらそう言うと、先生は他の生徒達のところへ歩いて行った。
私も、いつものところ、つまり、グラウンドの端の校舎の影に座る。
7月になったばかりの6限目。
あまりにも高い位置にある太陽は、校庭にある様々なものを惜しみなく照らしている。
自転車のシルバーのボディー。
水道から落ちる雫。
白いバレーボール。
そして、文句を言いながらも笑ってボールを弾く生徒達。
全てがきらきら輝いている。
もしも私が、あの中に入れたなら……
そう考えたことなら、数えきれないくらいある。
でも、それが叶わないことも、私は十分にわかっている。
< 1 / 29 >