ファンタスティック·レボルバー
*****
次の日の放課後、私はいつものように生物室へ向かった。



何も言わずにドアを開けて、静かな空間へ足を踏み入れる。


ガラス張りの戸棚から顕微鏡を取り出して、窓際の席に座った。



全てがいつもと一緒。


全てがいつも通り。



それなのに、どこか淋しい気がするのは何故だろうか。



外では、いつものように野球部が練習をしている。


どうやらまだ、初めのウォーミングアップの段階らしい。


2人1組になってストレッチをする部員達はとても静かで、少し不思議な感じがした。



「お! 今日は来てたんだな」



いきなりドアが開いたことにびっくりしていると、倉持先生が入ってきた。



「昨日はあれから大丈夫だったか?」


「はい」


「へぇ。ここからだと野球部の練習風景がよく見えるんだな」



私の返事を聞いているのか、いないのか、先生は勝手に話を変えていた。



「おっ、あそこに柴本もいるじゃねーか」



先生に言われて指された指の先をみると、確かに柴本くんがいた。



練習スペースの真ん中辺り。

丁度、私の位置から1番見やすい場所だった。



「ここから見やすいってことは、あそこからも見やすいのか。なるほどな」


「え?何ですか?」



顎に手を当てながら呟いた先生の言葉が聞き取れなくて、聞き返した。


すると、にやりと笑った先生は「何でもない」と言って生物準備室のドアに近づいていった。



「あ、そういえば……先生待って!」
< 19 / 29 >

この作品をシェア

pagetop