ファンタスティック·レボルバー
「ん? 何だ?」



ドアに手を伸ばすのをやめて、先生がこっちを振り返った。



「昨日、保健室で『気になる話がある』って言ってましたよね?何だったんですか?」


「え? 柴本から何も聞いてねーの?」


「はい」



何で柴本くんが関係あるのだろうか。



不思議に思っていると、倉持先生は近くの机にもたれかかって話しだした。



「お前と俺が付き合ってるって噂があるの、知ってる?」


「あ、はい。それは昨日、柴本くんが言ってました」



「そうか」と、何かを考えるように下を向いて呟いた先生は、また顔を上げた。



「昨日、廊下でお前のクラスの奴等がそうやって話しててな。面白そうだからそのまま影で聞いてたんだよ」


「先生、趣味悪いですね」


「ありがとう。
それでな、最後にそいつ等が『幸哉も可哀想だよな。いつも見てるのに』って言ってたからさ。面白いから二条に報告しようと思ってたんだよ」



見てる……か。



そういえば、柴本くん自身も昨日、そんなことを言っていた。



結局はぐらかされて、意味はよくわからなかったけれど……。



「しかし、柴本も見てるだけなんて、度胸ないよなー」


「見てるだけだと、何で度胸がないんですか?そもそも何で見るんです?」



意味がわからなかったから正直に言うと、先生は少し呆れたような顔をした。
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