ファンタスティック·レボルバー
見てた……?
グラウンドから……?
私を……?
「気付いては、いなかった」
「そっか」
私も、見てた。 ここから。
「どうして、見てたの?私……を?」
初めに柴本くんに言われた時も
さっき倉持先生に言われた時にも
自分が柴本くんを見ていた時にも
『見ていた』理由がわからなかった。
倉持先生の言った通り、柴本くんに聞けばわかるのだろうか。
「二条が好きだからだよ」
「すき?」
返ってきたのは想像もしていない言葉だった。
私はあまりたくさんの人と話すような、フレンドリーな性格じゃない。
だからきっと、柴本くんとまともに話したのも、昨日と今日くらいだと思う。
「何で?」
そう聞くと、柴本くんは困ったような顔をした。
そして、少し考えてから、もう一度まっすぐに私を見た。
「確かな理由なんてないのかもしれないな。ただ、二条幸香が好き。それだけ。
二条と一緒にいると心地よくて、一緒にいないと何か物足りないような淋しい気分になる。
そんな気分を少しでも和らげたかったから、いつも見てたのかも」
「うん……」
「そういえばさ、今気付いたんだけど、二条は『幸香』で僕は『幸哉』だから、2人とも名前に『幸』って字が入ってるんだね。
何か、そんなところも心地いいから好きかな」