初恋ストロベリー
3年前に購入した、マイホームの一軒家の門を開ける。

白い砂利の中に大きな石・・・玄関までのその道を
通り鍵が開いている家へ入る。

「ただいま」

私より大きな声で、お母さんが言うと各部屋から
「おかえり~」と声が聞こえたが
姿は現わさなかった。

唯一言うなら、ミニチュアダックスフンドの
ロンが玄関までお出迎えしてくれた。

「ちょっと、眞子 ご飯出すからレポート、棚に置いとくからね」

リビングからのお母さんの、声とは対照的な小さな声で「はぁい」
と聞こえた。

眞子はお姉ちゃんの名前。何とか有名私立大学に合格して
今は受験が終わって超のんき。

暇があれば寝るかTV観るか携帯いじるか。

こんなこと言ってるあたしも

高校受験が終わった春休みは勉強もせずに
お姉ちゃんと遊び呆けたけどね。

「はぁ、ちょっとぉ これ奈緒とロンでしょ 洗濯物たたんだの崩して・・・
走って遊ぶのもいいけど庭か広い所じゃなきゃ ダメ!」

最初みたいに、大きな声を出すのにも疲れたかの様に
ため息まじりでお母さんが言う。

「ごめん、すぐ行くー」
タタタタタと階段を駆け降りる音がする。

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