クロス†ハーツ
その笑顔はとても輝いていて、普通の女の子が見たら、それだけで惚れちゃうかもしれない。
でも、私はこの男の性格を知っているから。
だから、反論する。
「は…、なんで私!?」
「うーん…、雨宮、だから?」
笑顔で、私に頼みごとをする水瀬。
傍から見たら、私は羨ましがられるかも知れない。
でも私の心中は、決して羨ましがられるような、平和なものじゃなかった。
すると、私の視界に優しい笑顔が入ってくる。
「はい、薫。そうやって凛ちゃんをいじめないの」
「雅矢くん…!」
私の救世主である雅矢くんが、苦笑気味で私たちに近づいてきてくれた。
「このダンボール、さっき僕も持ってみたけど、重すぎだし。薫、いくらなんでもやりすぎだから、ね?」
「そ、そうだ!水瀬が、持って行けば良いじゃん!」
私が雅矢くんの後ろから、水瀬に向かって叫ぶと。
「…そんなこと言って良いと思ってんの、雨宮?」