クロス†ハーツ
生徒会長・坂下理久だ。
例の選挙で、水瀬に僅差で勝利し、今は生徒会長。
水瀬と同じ1年B組で、私も何回か見たことあるから知っていた。
でも会長が私のことを知っているのは、全く持って予想外。
会長は微笑して。
「生徒会長だからね。風紀委員のみんなに名前と顔は、把握してるよ」
「え、」
“風紀委員”という言葉を聞いただけで、嫌な気持ちになる。
全部、水瀬のせいだけど。
「あ、私別に、風紀委員になりたくてやってるんじゃないです!」
「知ってるよ?僕も君の委員長と一緒に、君の嫌がる声を聞いていたからね」
「え、本当に…?」
会長の言葉を聞いて、顔が熱くなるのを感じた。
恥ずかしくて、顔を伏せる。
「あの時の薫くん、怖かったよ。なんか、風見くんを呼んで、いきなり『1Cの奴、風紀に入れるから』って言ってたし」
「うわ…、すごく想像出来る…」
私が会長の言う場面を想像しながら、うなだれていると。
「薫くん、穏やか笑顔をいつも浮かべてるわりには、性格すごいよね」
「それで、一般の女の子達は、だまされるんだ…」
「そういえば、この荷物は?」
いきなり話が変わって驚いたけど、私は応える。
「え、あ…、これは資料室に、」
「じゃ、手伝うから、行こうか」
「え、良いの…?」
「もちろん。これ、かなり重いでしょ?」
「あ、ありがとう…!」
生徒会長の優しい笑みが嬉しくて、私は少し舞い上がってしまったのかもしれない。
会長が浮かべた企みの微笑を、私は見逃していた。