クロス†ハーツ
「会長、ありがとうね!」
「いえいえ、どういたしまして」
会長と資料を返しに行ってから、連れて来られたここは、生徒会室。
初めて入ったので、少し緊張したけど、造りは視聴覚室とあまり変わらなかった。
私は、あまり長居するつもりはないので、立ったまま。
「ねぇ、会長?私、そろそろ視聴覚室行かないと、他の仕事もあるし」
「凛ちゃん、会計だっけ?」
「うん、良く知ってるね」
「まあね…」
こうして会長と話してはいるけど、会長は私に背中を向けたまま。
表情も読み取れず、会長が何を考えているのか分からなかった。
私を帰そうとしない会長に、私は首を傾げる。
すると、会長がいきなり話し出した。
「僕ね、凛ちゃんに言わなきゃいけないことがあるんだ」
「え…、なに?」
会長はまだ背中を向けたまま。
私はひたすら、会長の言葉を待った。
「僕、大嫌いな人がいるんだ」
「え…?だ、いきらいな、人…?」
「うん。誰だか分かる?」
会長が私の方に振り向く。
その表情は、満面の笑みで。
私が首を横に振ると。
「風紀委員長の、水瀬薫くんだよ」
会長の声は、沈黙した生徒会室に、響き渡って消えた。