クロス†ハーツ
雅矢くんが水瀬に視線を向けて、少し含み笑いしながら話すと、水瀬が自分の顔を手が隠しながら雅矢くんを制した。
きっと、からかわれてると感じて、恥ずかしがってるんだと思うけど。
「水瀬でも、そんな顔するんだ…?」
「…おい、雨宮」
本心が出てしまった私の言葉に反応した水瀬の顔が、どんどん意地悪な顔になっていく。
そこで、私は自分の犯した失敗に気付いた。
「あ…!」
私はとっさに口を手で覆う。
そんなことしたって、一度声に出してしまったことを撤回できるはずもない。
「俺の顔が、そんなに変だったか?」
「え、だって、水瀬っていつも真顔か怒ってるか意地悪そうな顔ぐらいしかしないから…」
追い詰められるあまりに、ボロボロと本心が零れ落ちるけど、その度に水瀬の眉間のしわもどんどん深くなっていく。
これ以上話すと、さらにマズイことになると思い、誰かに助けを求めようとしたその時。
「ま、確かにそうね。薫ってあんまり顔に出ないし」
「はははっ…!薫、雨宮にそんなこと言われてたら、全校生徒にもそう思われてるんじゃねーの?」
水瀬の背後から、場の雰囲気に合わない声が聞こえた。