クロス†ハーツ


水瀬が近すぎて見えなかった水瀬の背後を見ると、声の主である早菜さんと尚人が、いつの間にやら言い争いをやめて仕事をしている。
と言っても、尚人は本当に資料の意味を理解しているのか、分からないけれど。


「お得意の言い争いはもうやめたんですか?」

「まーね。俺達大人だしねー、早菜ちゃん」

「あんたはガキだけどね」


水瀬が呆れた声で2人に聞くと、それぞれ返答が返ってくる。
早菜さんは見ている資料から目を離さずに尚人をあしらっていて、私は心の中で早菜さんに拍手を送る。
あの金髪男を尻に敷けるのは、きっと早菜さんしかいない。

そんなことを思っていた矢先、早菜さんは資料から目を離して、私や水瀬の方を向く。


「それよりも薫。あんた凛ちゃんいじめてないで、聞きたいことさっさと聞きなさいよ。じれったいわね」

「な…!」


早菜さんのその言葉に、私は心の中でさらに早菜さんに拍手を送った。

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