クロス†ハーツ


本当におかしな水瀬は、未だに私の頭に自らの手を乗せている。
その手にどんな意味があるのか良く分からないけど、なんだか少しだけ嬉しかった。


「暗い中でそんな格好したら、危なくないのか?」

「あ、ですよね…。でもコレ、友達に無理矢理押し付けられてるだけだから、なんとか抵抗すれば切り抜けられるかも…」


私がそう言うと、水瀬は微笑して、私の頭の上の手を離した。
その微笑は、いつものバカにしたような笑いではない。


「抵抗、か。…お前苦手そうだな」

「う…」


確かに、私は押しにかなり弱い。それは自分でも認めてる。
的確なことを言われて、黙るしかなかった。




「行くぞ、視聴覚室。お前、死ぬほど仕事あるぞ。サボったから」

「え…!だ、だからサボったんじゃないし!」


いきなりいつもの調子に戻った水瀬に、少し戸惑いながらも私は着いていった。


水瀬の意外な一面が見れた私は、その日ずっと機嫌が良かった、らしい…。


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