クロス†ハーツ
「ただいまー!」
「おかえりー」
家に帰ると、唯の高い声が聞こえてきた。それと同時に、リビングから出てきて迎えてくれる。
「唯、早いね。葵もいるの?」
「うん。中等部の文化祭は高等部より規模小さいからね」
「そっかー」
うちの学園は、中等部と高等部が合同で文化祭を行う。
合同と言っても、日程が一緒なだけで運営はほぼ別で、中高合同イベントくらいしか一緒に運営するものはない。
葵は生徒会長だし、唯も生徒会書記だから、それなりに忙しいと思うけど、やっぱり高等部の忙しさには勝てないようだった。
リビングに行くと、ソファーに寝っころがりながらテレビを見ている葵がいた。
「葵、ただいま」
「おー、おかえりー…」
葵はテレビに目を向けながら、手だけひらひらと振った。
その様子を見た唯が苦笑する。
「葵、機嫌悪いんだよ。仕事詰まってて、凛ちゃんのお化け屋敷行けなかったから」
「え…」
「余計なこと言うなよ唯!」
私の「ただいま」には振り向きもしなかった葵が、唯のからかいに素早く反応した。