クロス†ハーツ



「ただいまー!」

「おかえりー」


家に帰ると、唯の高い声が聞こえてきた。それと同時に、リビングから出てきて迎えてくれる。


「唯、早いね。葵もいるの?」

「うん。中等部の文化祭は高等部より規模小さいからね」

「そっかー」




うちの学園は、中等部と高等部が合同で文化祭を行う。
合同と言っても、日程が一緒なだけで運営はほぼ別で、中高合同イベントくらいしか一緒に運営するものはない。


葵は生徒会長だし、唯も生徒会書記だから、それなりに忙しいと思うけど、やっぱり高等部の忙しさには勝てないようだった。




リビングに行くと、ソファーに寝っころがりながらテレビを見ている葵がいた。


「葵、ただいま」

「おー、おかえりー…」


葵はテレビに目を向けながら、手だけひらひらと振った。
その様子を見た唯が苦笑する。


「葵、機嫌悪いんだよ。仕事詰まってて、凛ちゃんのお化け屋敷行けなかったから」

「え…」

「余計なこと言うなよ唯!」


私の「ただいま」には振り向きもしなかった葵が、唯のからかいに素早く反応した。


< 52 / 77 >

この作品をシェア

pagetop