クロス†ハーツ
「だ、大丈夫?そんなに噂、ショックだった…?」
「違くて…、水瀬が――」
「水瀬?」
とっさに出てきてしまった水瀬の名に、葵が私の言葉を遮って反応した。
振り向くと、あからさまに不機嫌な顔をした葵が、ソファーから起き上がってこちらを見ていた。
「水瀬が、何?」
「え、あ、なんでもない!葵、どしたの?そんな機嫌損ねて――」
「別に!…なんでもねーよ」
「……」
葵はまた私の言葉を遮った。
明らかになんでもなくはない顔をしながらも立ち上がる。
「俺、もう寝る。明日も忙しいから」
「え、葵…!?」
そう言って、私の横を通り過ぎる時に名前を呼んでも、葵は振り向かない。
その状況を黙って見ていた唯が、ため息を吐いて「おやすみ」と言うと、葵は背中を見せたまま手だけ挙げて、2階に上がって行った。
「何よ。…みんな不機嫌になっちゃって…!」
葵も、そして水瀬も。