女王様のため息
女王様は大変
①
ひっきりなしにかかってきた電話の対応に一区切りがついた時、時計は17時を示していた。
結局二時間以上も電話でひたすら謝っていた事になるのか。
なんて不毛な時間を過ごしていたんだろう。
仕事だとはいえ、謝る事ばかりをしていると、どんどん自分が情けない人間に思えてくる。
誰からも自分は必要とされていないばかりか、不要で邪魔な人間ではないかと錯覚してしまいそうになる。
もちろん毎日謝る仕事ばかりじゃないけれど、それでも思考は後ろ向きになって落ち込む。
大きくため息をついて。
手元の資料を閉じた。
確かに、カタログに出ている色と実際の商品の色が微妙にずれているのは認めよう。
それでも、光の当たり具合で変わってしまう色合いについてまで、きゃんきゃんとクレームとして電話をしてくるのはどうかと思う。
屋根の色なんて、天候によっても多少変わるのに。
お客様あっての仕事だとわかってはいるけれど、私だって人間だ。
思わず『それくらい仕方ないだろー』と怒鳴りたくもなる。
クレーム対応の疲れが体中に広がって、何もかもが面倒だ。
周りの目も気にせず、机に突っ伏して息をついた途端、机に置いてある携帯が鳴った。
< 1 / 354 >