女王様のため息
大人未満の高校生だった海と私。
長い人生を親戚という関係で過ごさなければいけない私達にとって、気まずさもなく、良好な関係で過ごすという事は、何よりも重要なものだと思っていた。
たとえ自分たちの淡い恋心を貫いて恋人同士になったとしても、もしも将来別れることになった場合、親戚という枠の中での気まずさを抱えなければならなくなる。
お互いの家族の事を愛している気持ちも大きかったせいで、未来に見え隠れする重荷を背負う勇気はなかった。
高校生だった私達には、踏み出せなかった。
もしも大人になった今、同じ選択をしなければならないのなら結果は違ったかもしれないけれど、まだまだ人生経験も浅い高校生だった二人には、不安定な将来に、自分たちの甘い恋心を賭ける事はできなかった。
『背負うかもしれない気まずさや重荷を受け入れる事ができるほど、お互いへの想いはなかったのかもな』
高校を卒業して何年か後、二人で飲んでいた時にふと呟いた海の言葉。
そうなのかもしれないし、違うかもしれない。
答えは曖昧すぎてよくわからない。
私を存分に甘やかしてくれて、与えられる限りの優しさを注いでくれる、家族以上に近い場所にいるのが海だけど。
他人よりも一番近くて、一生途切れる事のないつながりである親戚という付き合いがちょうどいい、そして決して恋人にはならない女。
それが、海にとっての私なのかもしれない。