女王様のため息
甘い涙の女王様

 

  *   *   *


司と海との張りつめたやり取りに支配された私の気持ちは、おいしいはずのランチもおいしく感じられないまま、それでも流れ作業のように完食。

『さすが女王様』

普段と全く変わらない飄々とした海に、『誰のせいだ』とほんの少しいらっとした。

既に昼食を終えていた司と貴和子は会社へと戻っていて、残された私と海が食事を続けていたけれど。

とりたてて私に何かを聞くわけでも、諭すわけでもなく、さっき司に投げつけた言葉の厳しさなんて忘れたかのような海の笑顔。

海のそんなマイペースな性格には慣れているし、それは彼の長所でもあると思うけれど、海の言葉を、司がどう受け止めたのかってことばかりに私の気持ちは取り込まれていく。

私を心配し過ぎての、悪気のない言葉だったとわかってはいても、どうにも私の表情も声も晴れなかった。

そのせいで。

『俺が真珠の事を大切に思ってるのは、これからも変わらないから』

海からそう言ってもらえる贅沢を味わいながらも、これまでのように素直に頷けなくて、唇をかみしめながら

『大切だけど、それだけの女でしょ』

海が傷つくとわかっていて、思わず口にしてしまった。

はっと気づいて視線を上げた私の視界に入ったのは、優しくて穏やかで、それでいて悲しげな瞳。

私にとっても、とても大切な人が悲しげに笑っていた。

けれど、司の事が気になって仕方がなくて、その表情にフォローを入れる余裕すらなかった。










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