女王様のため息
司の口調も言葉も強くてはっきりとしているけれど、彼の瞳が見せてくれる感情が、司の不安定さを正直に教えてくれる。
瞳は嘘をつかない。
司は、今こうして私と向き合う事にかなりの力と勇気を振り絞っているんだとわかるし、海と私の関係についてここまで踏み込んだ言葉、今まで言い出したことなんてなかった。
その言葉に戸惑いを感じるし、どうして、と思う。
「……だって、今まで、海しか私を見てくれなかったから」
そう。
司に恋焦がれていても、司が見ているのは私じゃなかったから。
「違う。俺も、真珠を見てた」
俯いた私の顔を、司が両手で包んだと思った瞬間、視線を合わせられた。
一瞬の事で抵抗する間もなかったけれど、合わさった視線の先に見えたのは、顔を歪めている司。
「俺は、真珠を見ていると気づかれないようにしていたんだ。
でもどうしても見ずにはいられなかった。
……真珠以外の女に寄り添っている自分には、そんな資格がないのはわかってたからな」
「司……」
「これからは、後ろめたさも何も感じないままに真珠を見ていたい。
美香には、美香だけを愛してくれる男が現れたんだ。
だから、これからは、俺だけを見てくれ。
海とはもう、気持ちの区切りをつけてくれ」
私と海との関係に、いつもからかうような調子で茶々を入れていた司の本心が、今聞いたものだとすれば、どれだけ苦しい思いを隠していたんだろう。
確かに親戚という関係では収まらないくらいの親しい付き合いをしている私と海へのもどかしい気持ちは、簡単なものではなかったはず。
「もう、限界なんだ」